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(イ) また,水蒸気爆発を防止するため,冷却水が循環していなければト
ーチを炉内に挿入できないようにするインターロックを設置すべきであ
ったのに,それが設置されていなかった。
さらに,トーチに冷却水が循
環していない状態でこれを炉内に挿入しようとした場合に,これを警告
するための警報装置も取り付けられていなかった。
そればかりか,本件
ポンプを運転させる操作画面には,トーチが炉内にあるか否かを確認す
る画面すら表示されなかった。
(ウ) さらに,本件事故においては,被告作業員が,再着火棒を炉内に挿
入するために,本件ポンプを運転して再着火装置に冷却水を循環させよ
うとしたところ,トーチへの冷却水の循環と再着火装置へのそれとが同
一のポンプで行われていたため,再着火装置だけでなく,トーチにも冷
却水が循環し,その結果,水蒸気爆発が発生したものである。
そもそも,
トーチの挿入と再着火棒の挿入とは別個の作業なのであるから,冷却水
ポンプを別々に設置するか,各装置に独立して通水できるような設備に
すべきであった。
(原告の主張)
本件灰溶融炉は,次のとおり,水蒸気爆発の危険を回避するための十分
な措置がとられていたものであって,通常有すべき安全性を欠くものでは
なかった(なお,弘前労働基準監督署による指導は,本件灰溶融炉そのも
のの欠陥を指摘したものではなく,今後の安全対策を更に行うための方策
を示したにすぎない。)。
(ア) 本件灰溶融炉においては,中央制御室に中央監視画面が配備され,
トーチ部品の点検及び交換作業並びにトーチ挿入作業を含む現場で実施
される作業については,現場の作業員と同室の作業員とが連絡を取り合
いながら連携して実施する中央一括管理方式が採用されており,トーチ
冷却水量及び圧力等の確認も,上記の中央監視画面上で行うこととなっ
ていたから,トーチ移動装置の現場動力制御盤に冷却水量及び圧力等を
重ねて表示することは不要である。
そして,本件ポンプを操作する中央
監視画面には「溶融炉ト, ーチ位置監視」画面が設けられており,トー
チが炉内にあるか否かについては,中央制御室において容易に確認でき
る仕組みになっていた。
(イ) なお,トーチに冷却水を循環させなければこれを炉内に挿入できな
いようにするインターロック又はこれを警告するための警報装置が設置
されていなかったことは認めるが,トーチ部品の交換作業の際,トーチ
に冷却水を循環させた後でなければ,これを高温の炉内に挿入すべきで
ないとの点については,前記争いのない事実等(6)イ及びウ記載の各手
順書にも明記されているだけでなく,本件灰溶融炉の運転・保守・管理
に従事する者にとって初歩中の初歩といってもいいほどの注意義務であ
るから,トーチについてのインターロックが設置されていなかったから
といって,本件灰溶融炉が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえな
い。
イ灰溶融炉設備に関する運転教育・指導について
(被告の主張)
(ア) 原告は,本件委託契約に基づき,Aをして,被告作業員に対し,灰
溶融炉設備に関する十分な運転教育・指導をさせるべき義務を負ってい
たところ,本件灰溶融炉は,高温を発するプラズマ装置を閉鎖空間で使
用するという特質を持つ設備であり,水蒸気爆発が発生する危険性があ
ったにもかかわらず,原告は,Aをして,水蒸気爆発を未然に防止する
ための運転教育・指導をさせることを怠った。
すなわち,被告は,Aからプラズマ装置のマニュアル(前記争いのな
い事実等(6)アの文書)の配布は受けていたものの,プラズマ装置を閉
鎖空間である灰溶融炉内で用いることの特質性を前提としたマニュアル
は作成されず,Aが本件手順書を作成してこれを被告に渡したのは,平
成15年4月14日以降のことであった。
しかも,本件手順書においては,水蒸気爆発の危険性や冷却水循環の
確認の重要性等が記載されておらず,誤って冷却水を循環させないまま
トーチを炉内に挿入した場合にとるべき手順も記載されていなかった。
また,運転教育・指導の過程においても,水蒸気爆発の危険性について,
一切指摘がなかった。
(イ) 原告は,後記のとおり,Aによる運転教育・指導は十分であったと
主張するが,灰溶融炉設備の負荷試運転の開始が当初予定の平成14年
12月23日よりも大幅に遅れ,かつ,その後もしばしば灰溶融炉設備
の運転が止まる状況の下,被告作業員は,Aの担当者によるトラブル処
理の応援に追われ,運転教育・指導を十分に受けられない状態であった。
そして,Aが平成15年4月以降も運転教育・指導を継続したことは認
めるが,担当者の人数を減らすなど,その運転教育・指導は十分なもの
ではなかった。
さらに,被告がそのことを指摘したにもかかわらず,原
告は,同年6月10日,Aによる運転教育・指導を終了させたのであっ
て,以上のような経過に照らせば,Aによる運転教育・指導が十分であ
ったとはいえない。
(原告の主張)
Aの運転教育・指導は十分すぎるものであり,被告作業員が灰溶融炉設
備の運転を十分に習熟できなかったのは,被告作業員の運転技術の未熟さ
や被告作業員の交替が度重なったことによるものである。
すなわち,Aは,当初,運転指導期間を45日間と予定して,平成14
年12月以降,被告作業員に対し,上記設備の運転手順を指導し,特に,
トーチ冷却水系統や配管等については,現場において確認し,冷却水循環
の必要性を周知徹底させた。
しかも,被告作業員の熟達度が十分でなかったことから,Aは,原告の
求めに応じ,平成15年5月まで被告作業員に対する運転指導期間を延長
し,さらに,被告作業員がAの運転指導員の指導に従わなかったり頻繁に
メンバーが交替したため,同月28日,再度,運転指導期間を同年6月2
7日まで延長したものである。
したがって,原告には,同設備に関する運転教育・指導について,過失
はない。